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自分マッサージをやってみよう!

 

 クリニックで仕事をしているスタッフや私も、時間があるときにおたがいを治療することがあります。「便利でうらやましい」と声が聞こえそうですが、それはちがいます。家でくつろいでいる落語家さんに「落語を聞かせろ!」と要求するのと同じで、そこには節度が求められます。ほんとうに困ったときにはちゃんとお金を払って治療を受けますし、できるだけ自分で体のケアを行っています。そんな時に役立つのが「自分マッサージ」、今回のお話です。

 

1 なでさすりは自然にできるもの

 

 だれかが苦しがっているとき、そばにいる人が思わず手を伸ばし、痛いところをさする。これは私たちに生まれつき備わった性質の一つです。仲間に手を触れてもらうと安心し、それだけでも緊張がゆるみ、痛みも軽く感じるようになります。これはサルの毛づくろいと全く同じで、私たちがご先祖様から受けついだものです。

 

 触っただけで安心させ、触ってもらっただけで安心できる。マッサージのやり方を考える前に、このことをまず押さえておきましょう。これからお話しする自分マッサージでも、自分がいやになるようなやり方をする必要はありません。少しづつ、毎日続けられるように。これが自分マッサージのやり方です。

 

2 トリガーポイントのことを知ろう

 

 トリガーポイントは、約60年前にアメリカの医師ジャネット・トラベルさんが命名したもので、筋肉の中に痛いしこりができたものを指します。やはり医師であったお父さんのがんこな肩の痛みを治そうとしていろいろな治療を試み、その結果トリガーポイントを見つけて注射をすれば痛みがなくなることを発見したのです。

 

 のちにジャネットさん自身も肩痛で大好きなテニスができなくなり、今度はお父さんに治してもらいました。この知識を生かし、二人はいろいろな患者さんの痛みの治療にも成功するようになりました。しだいに評判が高まってきたある日のことです。当時のアメリカ大統領ケネディ氏から相談があり、ジャネットさんはケネディ氏の頑固な痛みを診療して治しました。以来大統領付きの医師となったジャネットさんは共同研究者のサイモン博士といっしょに、今までの経験をもとにして有名な「トリガーポイント・マニュアル」を書きあげます。

 

 トラベルさん自身はおもに注射でトリガーポイントを治していたのですが、大きな筋肉や届きにくいところにある筋肉は注射だけで治すのが難しいことも気づいていました。著書の中では注射のほかにマッサージやストレッチも書かれており、原因や予防法にも触れています。注射だとお医者さんしかできませんが、マッサージなら患者さんが自分でできる方法です。

 

3 自分マッサージはむずかしくない

 

 そこで自分マッサージをお勧めしたいのです。むずかしい技術はなく、誰でもできる方法です。プロの代わりにはなれなくても、自分のカラダだから痛さの調節もできます。痛みに強い人はそれなりに、弱い人はとても軽いマッサージから始めればいいのです。

 

 はじめは上手にできず、こんな感じでいいの?と思うかもしれません。しかし、いつでもできるのが強みです。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」とことわざにあるように、小まめにやれば(あれ、ちょっといいかな?)と思うときがきます。そして練習していけば、だんだんと上手になっていきます。

 

 重要なポイントは、繰り返しちょこっとづつマッサージすることです。からだはすぐには変化しません。血の巡りが改善し、老廃物が洗い流され、筋肉の新陳代謝が活発になり、縮んでいた筋線維がゆるみ・・・というように、順調に回復する場合でも変化は数日~数週間かかるものです。たくさんの筋に故障があり、長く患っているケースならばなおさらです。ここに自分マッサージの強みがあります。自分でできるのですから、ちょっとした時間を利用して繰り返し治療してみましょう。

 

4 自分のからだをチェックする

 

 ただし、『痛みの原因である』筋肉をみつけるのが意外と難しいことも知っておきましょう。トラベルさんやお父さんも、痛いと感じるところに注射をしていたわけではありません。痛みの「原因部位」と「感じる部位」はちがうことが多いのです。クリニックでは患者さんに原因部位をマッサージするように指導していますが、患者さん自身が思ったところとほとんどちがうので、始めはとまどうかもしれません。さらに細かいことを知りたい方は、スマホやパソコンで「トリガーポイント」と検索してみるといろいろ情報が見つかるはずです。

 

 また、トリガーポイントは再発することも多いのです。仕事や生活上の負担、ストレス、栄養や睡眠の問題などで発症しますから、トリガーポイントができやすい筋肉を定期的に触れて、(ちょっと痛くなってきたぞ)と感じたら自分マッサージをし、からだにも気を配る。という風にいけばベストです。

 

 

 

(Trigger Point Therapy Workbookの紹介はこちら