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補装具を活かす

 

 

 補装具とは杖やコルセットなど、手に持ったり着用してふだんの生活の助けをする道具のことです。車いすのように大きいものがある一方、コンタクトレンズや補聴器のように小さいものもあります。身近でないようで、意外と身近にある道具です。今回のお話です。

 

1 杖・松葉杖

 

 3年前、かかとの骨折をおこしたときに私も松葉杖のお世話になりました。慣れないうちは汗びっしょりになりましたが、そのうちあちこち出かけるようになり、家族といっしょに買い物や食事に行ったり、学会に出かけたりしました。都内の駅にはまず間違いなくエレベーターがあるので、行こうと思えばたいていのところに行けるのです。もしも杖を使わなかったら、仕事に行けず、家からも出られず、ずいぶんつらかったはずです。本当にありがたい経験でした。

 

 年齢が高くなったとき、杖を使ったほうがいいか聞かれることがあります。体力低下や故障のため歩くことに不安を感じているなら杖がおすすめです。「転ばぬ先の杖」のたとえ通り、いざというときにちょっと支えがあるだけで転ばずに済むなら、外に出たくなりますよ。一度杖をついたらもうやめることができないのでは?と心配する人がいますが、これは誤解です。一時的な体力低下があるとき、杖を使ってがんばって歩く練習を続ければ、ふたたび杖なしで歩けるようになります。

 

 ご高齢になり、せなかが丸くなったり神経痛が出たりするときにも杖は役に立ちます。足の故障・マヒが残る人にも大きな助けとなります。

 

2 コルセット・サポーター

 

 コルセットとは体にまきつけるバンド状のものを指しますが、医療用ではプラスチックなどで固めに作ったものもあります。せぼねやそのまわり(靭帯や筋肉)に痛みがあって動かしづらいとき、コルセットで一時的に保護してあげるだけで痛みが軽くなることがあります。故障部位を保護するだけで治る故障も多いので、そのあいだの時間稼ぎをするわけです。

 

 「コルセットを長く着けると良くない」と言われることがありますが、コルセットを長く着けると腰回りの筋肉の力が落ちる可能性があります。だから故障が快癒したらコルセットを外したほうがいいと思います。しかしながら体の故障は千差万別で、長くコルセットを必要とする方もいます。ケースバイケースなので、迷ったら相談してみてください。 

 

 サポーターは手足に巻くもので、文字通り巻いた部分をサポート(支える)します。特殊な支柱付きのものもありますが、よくあるのは弾力のある布地でできたタイプです。骨折後のリハビリ中、筋力が落ちた膝が痛むようになりました。市販のサポーター(1000円くらい)を使ってみたら楽になり、助かりました。コルセットと同じく一時的な助けになりますが、やはりつけすぎると問題です。症状が軽くなってきたら外すことを考えましょう。医療用のものもありますが値段が高めですので、まず市販品を試してみましょう。通販などで安く手に入ります。

 

3 マヒを助ける

 

 病気やけがのためにからだにマヒが残ることがあります。それでもできることをしたい、家事や仕事にもどりたい、旅行やスポーツをやりたい。そういう願いにこたえるためや、リハビリのお手伝いとしていろいろな補装具が生まれてきました。歩くための杖のほかに、膝くずれや足の引っかかりを防ぐための下肢装具がよく使われています。一人で歩くのが難しい場合は車いすや電動車いすがあります。マヒがあっても車を運転できるよう自動車を改造する方法もあります。

 

 まだまだ一般化されてはいないものの、ロボットスーツのような歩行機器も開発されています。将来、こういったスーツを付けた人たちが街を自由に散歩したり、買い物に出かけるようになるかもしれません。子供のころ夢物語だった携帯電話がこれだけ普及しているのだから、大いにありそうだと思いませんか。

 

4 補装具は勇気を与えてくれる

 

 下肢の故障でほとんど家から出なかった方がシルバーカーで歩き始めました。以前よりせなかがしっかりして、姿勢も良くなりました。歩くことで、使わなかった部分がきたえられたのです。前向きな気持ちを、シルバーカーが後押ししてくれたのですね。

 

 今年の正月のことです。よろよろとジョギング中、軽快に飛ばしているジョガーを見かけ、すれちがってびっくり!義足で走っている方でした。こりゃ、こっちもがんばらなくっちゃ!!と思いました。する人はもちろん、見た人にも勇気を与えてくれる、ちょっと感動する経験でした。

 

 道具である以上、補装具もどれだけ使い込むかがだいじです。使って、使って使いきる。その気持ちがあれば、使って良かったと思えるはずです。

 

(オットーボック社ホームページより)