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その痛みは筋肉痛かも

 

 

 痛みの原因が筋肉にあると説明した時、「筋肉痛ですか⁈」と驚かれることがあります。骨や関節の痛みだとふんふん(なっとくです)と聞いてくれるのですが、筋肉の痛みと言われると軽くあしらわれたように感じるようです。

 

 でも‼それはかんちがいです。筋肉の痛みを見落として、別の故障とまちがうことは珍しくありません。診たてがちがえば治療もちがってきます。筋肉なら筋肉向けの治療があるのに、骨や関節向けの治療を続けたなら効果が出ません。だからきちんと筋肉の故障をみつけることが必要です。

 

1 プロとアマでは言葉の用い方がちがう

 

 プロが筋肉痛という時、その意味は「筋肉に原因がある痛み」のことを指します。多くの人たちが考えるような「がんばったり疲れたときに出てくる痛み」のことを指しているわけではありません。たしかに運動不足の人がいつもよりがんばった時に感じる痛みも筋肉痛の一例ですが、筋断裂(肉ばなれ)、DOMS(後述)、炎症、血流障害や感染症(ウイルスなど)などさまざまな原因で筋肉痛がおきます。

 

 一番多くて外来でしょっちゅう診るのはトリガーポイントです。筋肉の中に押すと痛いしこりができるのですが、みなさんにしてみればごく普通の生活をしているのにできるのですから、筋肉が原因と言われてもすぐに納得できない気持ちはわかります。そして筋肉痛の診断をさらにむずかしくしているのが「関連痛」の存在です。

 

2 関連痛とは

 

  • Aさんは手関節痛の相談で病院を受診したのに腕の筋肉が原因と言われた
  • Bさんはおなかの痛みで受診したのに筋肉が原因と言われた
  • Cさんは腰痛で受診したのに腎臓に石があると言われた
  • Dさんは右肩の痛みで受診したのに、調べたら肝臓の病気だった

 

 上にあげた4人のケースはいずれも関連痛を発症した人たちです。A,Bさんのような相談は多くてしょっちゅう経験します。C,Dさんのようなケース(内臓が原因でからだの痛みが生じる)はときどき診ます。関連痛がおきるのは、からだのありとあらゆる部分が神経でつながっているからだと言われています。神経は複雑な配線図で区分けされていますから、関連痛が起きるときは同じ神経のグループ同士で痛みの共有(混線)が生じます。だから神経の配線図を細かく知っていれば、関連痛の配置から原因部位を突き止めることができるのです。

 

3 筋肉の故障はなぜおきるのか

 

 トリガーポイントの場合、①使いすぎ②疲労の重なり③運動不足が発症の三大原因です。たとえば在宅ワークで家の外に出ることが少なく、朝から晩までパソコン作業、運動の習慣がなくて睡眠不足気味の人を想定すると、三大原因全部があてはまってしまうのでトリガーポイントができやすくなるわけです。

 

 一見逆のようですが、アスリートの人たちもトリガーポイントを作りやすいです。トレーニングをする≒体に負担をかけることなので、適度な量を越えたトレーニングが続くと疲労が重なりトリガーポイントができやすいです。またスポーツには故障がつきもので、故障を抱えながらトレーニングを続けることで逆に筋の負担を増やしさらに故障を招くことも珍しくありません。

 

 筋の炎症でまず思い浮かぶのはインフルエンザです。あの何とも言えない重だるい節々がうずく感じ・・・はウイルス性筋炎のサインです。新型コロナ、伝染性紅斑(リンゴ病)も筋肉痛を起こすことで有名ですが、ふつうのかぜだって筋肉痛を生じることがあります(もともとコロナはかぜウイルスです)。

 

 そしてDOMS(遅発性筋痛:ドムス)です。かなり強度のきつい運動をやった後に、歩けなくなるくらい強い筋肉痛が生じます。筋細胞があちこちで破壊され、壊死したところに新しい筋細胞が生まれてきます。ここまでやるのは✖ですが、筋肥大のためにボディビルダーやウエイトリフティングの選手がわざとやることもあります。

 

4 筋肉痛のみつけかた

 

 正常な筋肉は指で押してもそれほど痛むものではありませんが、自分で筋肉をあちこち押すと痛いところが見つかるかもしれません。トリガーポイントには活性型(実際に痛みを生じるタイプ)と潜在型(ふだんは痛みを生じないタイプ)の二つがあります。押して痛い筋肉はあるものの症状がない場合は潜在型だと思います。経験上たくさん歩く職業の人は下半身に、パソコン作業の人は上半身にトリガーポイントがみつかることが多いです。

 

 専門的にはもっと細かく診わけるのですが、みなさんはまず自分が痛いと感じる場所を触ってみてください。触って痛くない場合は周辺の筋肉を触りましょう。痛みを感じる場所の上下左右を広く押して痛みを感じる箇所がみつかったらトリガーポイントかもしれません。みつけたら一日数回マッサージしてみましょう。あれ?痛みが消えた!と思うときが来るかもしれませんよ。