ファンクショナル・トレーニング15

上半身のトレーニング

 一般的にいうと、どうしても胸や上腕のトレーニングが強調されがちだ。しかしだいじなのは背中の筋肉で、ロウ(ボート漕ぎ)やプリング(懸垂)こそ大事なのだ。しかしアスリートで背中の鍛錬を意識するものはあまりいない。押すと引くはセットで等しく行うようにしよう。

プリング(引く動き・懸垂)

 懸垂を取り上げているトレーニングプログラムは意外と少ない。その理由は単純で、懸垂はきついからだ。そこで押す(プッシュ)ばかりのエクササイズを続けると胸筋群が過発達し、肩甲骨をコントロールする筋群が相対的に弱化する。すると肩関節の安定性に問題が生じ、腱板の故障が生じやすくなる。だから懸垂やロウ(ボート漕ぎ動作)を必ず取り入れたプログラムが必要なのだ。

チン・アップ

手のひらを自分に向けて(外旋)行う。写真ではバーにかけたゴムバンドを膝に当ててアシストをしている。

パラレル・グリップ・プルアップ

手のひらが内側を向く(中立位)での懸垂。より前腕の筋肉を使う。

プルアップ

 手のひらを前向き(内旋)にして行うチンアップ。より難易度が増す。

プルダウン

 若年者、女性や中高年など懸垂ができるほどの筋力がないけーすでは、ケーブルマシンを使うのが現実的だ。

Xプルダウン

上手にできないときは、片側だけでやってみよう。

ロウイング

 ボート漕ぎの動作は水平方向のプル動作になる。これはベンチプレスで鍛える筋群のちょうど逆側(拮抗する)の筋群を刺激する方法だ。

ダンベル・ロウ

シンプルで、初心者に向いている。背中が丸くならないよう気を付けよう。

キャット・カウ(猫と牛)

脊椎のカーブがうまくコントロールできないとき、このエクササイズをとり入れる。

ベンチ・ストラドル・ロウ

ベンチを使って足を固定し、膝が崩れないことを意識させるやり方。

片手片足ロウ

下半身の筋肉を使って体幹をコントロールさせることを意識させるやり方。

片手両足回転ロウ

半分スクアット+半分ロウと言い換えてもよい。これからのトレーニング法で重要となる動作だろう。

プッシュアップ

 プッシュアップ(腕立て伏せ)はもっと評価されてよいエクササイズだ。とくに大柄な選手には有用だ。

両足挙上プッシュアップ

通常のやり方ではさほど苦にならない場合は、これをやってみよう。

BOSUボール・プッシュアップ

上肢のコントロールが難しくなるため、さらにきつい方法だ。

オーバーヘッド・プレッシング

 バーではなくケトルベルやダンベルを使うことで、片側性でかつ肩の動きの制限がないエクササイズができる。

片ひざつきケトルベルプレス

このポジションのまま左右交互にケトルベルを挙上する。挙上の時に上肢が外旋する自然な動きが可能な方法。

高膝立ちケトルベルプレス

次の段階は、立ち位置で片足を台に乗せて行う。より体幹のコントロールが必要。

立位ダンベルプレス

背筋から骨盤にかけてのコントロールができるようになったら、立位でのプレスを行う。

肩甲胸郭・肩関節トレーニング

 肩甲骨と肩関節をコントロールする筋群をトレーニングすることは有用だ。

YW(ワイダブリュー)コンボ

写真では左は上から(Y)、右は下から(W)伸ばした腕を後ろにもっていく。

左右を変えて行う。

T(ティー)

ハンドルを持った両手を左右水平方向に後ろにもっていく。

立位外旋運動

肘を逆側の手で支えながら外旋方向への抵抗運動を行う。肩関節のアライメントが最も保ちやすいポジションで行う方法。