では下肢痛をエクササイズでどのように改善するのか見ていきましょう。どのエクササイズだったのかは私の推測です。
本に出てくる男性のケースです。スキーをたくさんやった後から右ひざの痛みが出て、ドクターにかかり、安静の指示だけではスポーツに戻れないと思いクレイグさんのところにやって来ました。
クレイグさんが調べてみると、腰回りががちがちに力が入っていて、股関節の動きもとても固い状態でした。歩くとき、つま先を外向きにして歩きますが、本人はまったく気がついていませんでした。
そこで次のエクササイズを指導しました(エクササイズの解説はその10を参照)。
4 股関節曲げ伸ばし
仰向け両膝立ての状態から右ひざを両手で抱え込む。背中に力を入れないように注意しながら左ひざを伸ばして、またもとの位置まで戻す。
ももうらの筋肉(ハムストリング)ではなく股関節を動かす筋肉(腸腰筋)を使うことを体感する。体幹コントロールと独立して腸腰筋を動かせるように。
6 足上げ屈伸
壁際に寝そべり、両足を壁にもたれかける。腰に力を入れず、膝が楽にまっすぐに伸びるようにおしりの位置を調整する。
(1)ここからゆっくりと膝を屈伸する。
(2)足を外向き・内向きに回す。
ひざから下は力が抜けていても、おしりの筋肉で動きをコントロールできることを体感する。と同時に力が抜けるときは抜けて、殿筋で腰を固めることのないように意識する。
8 腰まわし・体まわし
膝立ちから両膝をどちらかにだらりと倒す。腹斜筋を使って反対側まで膝を倒す。これを繰り返す。
つぎに膝立ちのまま、腹斜筋を使って上半身を左右に回す。
いずれの動きもリラックスして腹斜筋のみで行う。
腹斜筋の使い方を体感する。
10 股関節まわし
両膝立ちから片膝を外側に倒す。そのまま膝を伸ばしていき、伸び切ったところでつま先を上に向ける(股関節の内旋)。またつま先を外向きに倒してから、再び膝を曲げていき元の状態まで戻る。
股関節の回旋動作をでん部の筋肉で行うことを意識し、それに応じて膝の向きが変化することを体感する。
11 大腿まわし
写真のように左足に右足をからめ、右足の力で下半身を横倒しにする。そこから左足の内また(腿の内面)の筋肉に力を入れてさらに左ひざを床に近づける。左右を替えて行う。
内またの筋肉(恥骨筋、短長内転筋)で股関節を内旋できることを体感する。
12 ドアノブ屈伸
写真のようにドアノブをつかみ、からだは垂直のままで、屈伸する。
背中の筋肉を使わずに、下肢の筋肉だけで屈伸ができることを体感する。
エクササイズを続けた結果、クライアントさんは楽にむりなく歩けるようになり、2か月後には膝の痛みは消失しました。半年後のスキーシーズンには問題なくスキーができるようになっていました。
おそらく、内転筋やハムストリングの短縮とトリガーポイントがあって痛みをおこしていたのでしょう。本でははっきりと書いていませんが、治療はエクササイズと手技療法を組み合わせているようですから、マッサージやストレッチもしているはずです。
こうやって見ると、エクササイズの持つ意味がだんだんとわかってきたのではないでしょうか。