ブーマーウォーク 11.

レースに出よう!

 

 そもそもレースがやれそうだから、競歩に興味を持ったのだ。きつい練習をしてもケガはしそうにないし、がんばればメダルをとるのも夢ではない。レースが近づくと、がぜんやる気が出て練習に励むわけだ。

 

 レースでのたたかいを楽しみにしているし、歩く距離に応じて練習内容も変えている。1500メートルだったらスピード練習を増やす。テンケー(10K)なら長めの練習を取り入れる。

 

 かりにレースがなかったとしても競歩を続けると思う。やること自体が楽しいし、心臓・筋肉・骨にもいいのだ。だが今のところは競技を続けたい。あなたもそうだろう。レースのみつけかたを教えよう。

 

 初めてのレースはイリノイ・シニア・オリンピックだった。各州に同様の競技会があって、5歳ごとの年代区分~50-54,55-59,60-64…を採用している。全米シニアゲーム協会(NSGA)のサイトを見ると詳細がわかる(日本では日本マスターズ陸上競技連合のサイトから)。

 

 さらに各地方のサイトでは具体的な競技会の内容や記録がわかる。同年代の参加者の数が少ないときには、とりあえず失格にならなければ何らかのメダルがもらえることもある。

 

 各州単位(都道府県別)の競技会で、参加したくなる競技がいろいろ見つかるかもしれない。わたしは巾跳びと高跳びに挑戦してみた。またバスケットのフリースローと正確さを競うキャストフィッシングにも参加してみた。

 

 多くの州では競技会に参加するのに特別な資格は必要ない(マスターズも同じ)。またどこの誰でも参加できるので、州外の参加者も歓迎される(マスターズ会員であれば日本も同様)。だから参加できる競技会が増えることになる。初めてのレースでわたしを驚かした二人の選手もまた州外の人たちだった。

 

 全米大会は奇数年ごとに開催されている(日本では毎年)。参加のためには州での資格取得が必要である(日本では参加自由)たとえば2009年の大会に出たければ2008年中に資格取得をしなければならない。各州の年代別・男女別で3位以内に入らなければならない。ときに第4位まで含まれることもある。もしも参加者が多い州に住んでいる場合は、参加標準記録を上回っていれば資格が得られることもある。参加できるレースが1種目しかなくても心配はいらない。州の大会が1500メートル、5キロのいずれの場合でも、全米ではどちらの距離にも参加可能である。

 

 また州外の参加者にも全米大会への道が開かれている。2008年に、わたしは地元のイリノイ州で参加資格をもらう前にアイオワとミズーリの大会で資格を得ていた。地元の大会が開かれているときにたまたまけがや病気をしていることがありうるので、他州でのレースは一種のセーフティネットと言えるだろう。

 

 州外の参加者を受け入れていると地元の人のチャンスがせばまるわけではない。州外の参加者が3位以内に入れば全米への資格が得られるが、州内の参加者中上位3番以内に入ればこれも資格が得られるのだ。

 

 また多くの州で独立した地元レースが開かれている。フロリダのようにシニアゲームと連動しているケースもあるが、多くは完全に独立している。地元のサイトでこういったレースについて調べることができる。グーグルなどの検索サイトを使って調べるのもありだ。

 

 競歩クラブがメンバーや一般向けのレースを開いていることも多い。ロードレースの中には競歩での参加を受け入れていたり、早めのスタートをさせてくれる場合もある。はじめて 10キロを歩いた時のスタート時間はランナーの30分前だった。もし私が十分に速かったら、ゴールまでどんなランナーにも追いつかれなかったはずだ。

 

 もしも競歩で参加してもいいか判断に迷ったら、あらかじめ連絡して確認しておくといいだろう。多くのレースで参加者の中にはゆっくりとジョグしたり、歩いたり走ったりをくりかえしている人たちがいるので、競歩で歩いてもびりになることはないはずだ。

 

 わたしがロードレースに出るときは「競歩」と書いたTシャツを着て出るようにしている。観客に競歩を見てもらいたいという思いが一つ、変な走り方をしているのではないとわかってもらいたいのがもう一つの理由である。最初の10キロレースで私は吸湿速乾素材のしゃれたランシャツで走ったが、思ったより擦れやすい素材だったようだ。レースの後,観戦した友人から「あなた、血が出てたわよ!」と言われた。下を見ると確かに二か所赤いしみがついているのが見えた。「長距離に出るのだったら胸に絆創膏を貼りなさい!」としかられた。これがいまのところ競歩で経験した一番大きいけがだ。

失格をさける

 

 審判のいるレースに向けて努力したはずなのに失格を宣告されたらがっかりだろう。だがあまり落ち込む必要はない。傑出した選手でもときには失格するのだ。前に書いたように私の初全国レースのときにも、二位を歩いていた選手が最終ラップで失格となった。

 

 競歩向きの衣類を身に着けることが大事だ。ショーツは十分に膝が見えるくらいの短さで、審判が判定をしやすいようにしなければならない。最近の流行はひざ上までくるタイプだが、これは長すぎる。寒いときにはタイツが許されることがあるが、体にぴったりとしたタイプで下肢の形がしっかりわかるものでないとだめだ。

 

 実際にレースに出る前に、いちど競技規則を読んでおいたほうがいいかもしれない(日本では日本陸上競技連盟のページから参照できる)。審判が何を見ているかがわかるし、審判の目を引きやすく、レース中に目をつけられやすいくせがどんなものか理解できると思う。

 

 審判は選手がルールを破りそうなギリギリの線にいるときに注意することができる。このとき審判はイエローパドルをだして選手に知らせる。パドルの一面には波型(~)が書いてあって両足が地面から離れていること(ロス・オブ・コンタクト)を示し、もう片面には横になったV(<)があってベントニーの可能性があると教えてくれる。

 

 審判が実際に違反であると判断した場合は、レッドカードを記録する。もし3人の審判からレッドカードを切られると選手は失格になる。レース中各審判は一人の選手に一枚しかレッドカードを出せないことに注目してほしい。レース中選手から見える位置にボードを置き、レッドカードの有無をチェックできるようにしていることもある。こうすれば2枚目、3枚目のレッドカードをもらう前にテクニックを修正し、カードをもらわないようにすることができるわけだ。ボードがない場合は、主任審判がレース中に選手に失格を宣告する。短いレースの場合は宣告の時間が取れないので、選手はレース終了後に失格を知ることになる。(続く)