ブーマーウォーク 10.

ドリル・筋力強化

 

ドリル

 

 練習やストレッチの所で述べたように本やネットの情報を見ると、ケイデンスを上げたり柔軟性を高めるいろいろなドリルがみつかる。私がやっているドリルの一つは、マクガバンが講習で使いサルベージもすすめているクイックステップというやつだ。ごく小さなステップを踏みながらできるだけ速く競歩をするのだ。足はほんのすこしづつ前に進むだけだ。これを長くは続けられないが、やっていると競歩のときのケイデンスが上がっているようだ。

 

 また1分間、歩数を数えながらできるだけ速く歩くドリルもやっている。両足を数えるのはたいへんなので、右か左のどちらかだけを数えて、あとで倍にするといい。右足で数えるときと左足で数えるときを分けている。無意識に数えている側のステップを強くしがちなようで、こうして足の負担を左右等しくしているのだ。

 

 一流選手の場合、毎分220回を超えるステップ数で数マイルを歩くことができる。わたしは1分間なら毎分180回で歩くことが可能だ。続けていくと180ちょっとで1分間歩けるようになるかもしれないが、それよりよりは長くゆっくりめで歩くときのケイデンスが少々上がることのほうがありそうだ。練習中調子がイマイチでペースが上がらないと感じたとき、この1分間ドリルを途中でやるようにしている。こうやって気持ちを集中させると無意識にペースが上がってくるようだ。練習に身が入らない日に私が使うトリックでもある。

 

 短期間で一番効果的だったドリルが「4分間鏡ドリル」である。ボニー・スタインが教えてくれた。彼女の弟子のひとりで今はコーチを手伝っているキナン・ジョンストンには、なかなか直せない腕のくせがあった。あるときスタインは彼女のくせがほとんど直っていることに気がついた。やっていたドリルを説明すると、スタインは「4分間鏡ドリル」と名付けた。

 

 この簡単なドリルでは、まず鏡の前に立って1分間競歩の腕ふりの練習を行う。つぎにからだの右側を向けて1分間腕ふりをして、左でも同じことをする。最後にもう一回正面を向いて腕ふりを行う。足は動かさない。

 自分の腕ふりを鏡で観察しながら、即座にくせを修正していく。この方法は魔法のように効き、わたしは三つの大きなくせを直すことができた。肩が上がること、頭が下がること、そして腕が横にばたつくことだ。競歩の練習ができる日であろうとなかろうと、毎朝つづけるといい。正しいテクニックをくりかえすことこそ成功へのカギである。スタインは教育学の修士号を持っているが、ある動作を神経系の中に焼き付けるためには2万回の反復動作が必要だそうである。

 

筋力強化

 

 競歩を始める前、わたしは筋トレとしてフリーウェイトやマシンを使って8~12回のレペティション(反復運動)を行っていた。筋肉量を増やそうとしていたのだ。今はやり方を変えた。より軽いウェイトで、より多くの回数をすることで、筋肉量を増やすより健康を促進し持久力を上げようとしている。どっちみちやせ形なので、何をやってもそれほど筋肉はつかないのだ。筋トレを週2回やろうとしているが、さわやかな夏の天気のときはどうしても外での練習になってしまう。マシンのトレーニングには注意が必要だ。やりすぎるとひざが痛くなる。このことはまさに啓示だった。ウェイトマシンでちょっとがんばっただけでひざが痛くなるのに、10キロの競歩はできるし、翌日もひざは痛まない。バスケをやっていたころとはちがい、練習の後ひざを冷やす必要もない。

 

 筋力強化運動は筋・骨格・関節の健康に良いのは確かだ。クロウリーとロッジもそう述べている。サルベージとマクガバンも本の中にそう書いているし、競歩選手に役立つ筋トレ法を紹介している。またマクガバンは重いウェイトを使ったトレーニングを加えることで瞬発力を強化する方法も示している。

 

 現在何の筋トレをやっていないとしても気楽にはじめてみよう。トレーナーに相談するなら、あなたの関心は持久力と全身の強化であって、ムキムキのからだになることではないとはっきり言っておこう。

 

練習、練習そして練習

 

 テクニックの章を終えるにあたり、競歩のテクニックを体にしみこませるためにはとにかく繰り返しの練習が必要なことを強調したい。歩くスピードを速くしたり、距離を伸ばせるようになるのも基本は同じだ。練習、そしてストレッチやドリルを繰り返し行うことで、タイムの向上とより長い距離に挑める体力が得られるようになるだろう。

 

その他

 

 あなたに十分な知識とやる気をさずけられたと思うが、いずれほかの人からの助けが必要になることもあるだろう。巻末に参考になりそうな資料(略)をあげておいた。競歩クラブ以上にテクニックを磨ける場所はなく、そこで仲間からの分析と助けがもらえるだろう。(続く)