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役立つストレッチ

 

 

 18歳のときスキーで膝をひねって以来、左下肢の重苦しい痛みが残っていました。35歳のときにストレッチを始めて半年たったころ、痛みが消えていることに気づきました。

 

 それからずっとストレッチの信奉者だったのですが、なんでもストレッチが効くか?というとそうではありません。今回のお話です。

 

 

 

1 ストレッチのコツ

 

 ストレッチはたしかに効きますが、効かせるにはコツがあります。①ゆっくりと②伸ばすところの力を抜いて③ちょっと痛いくらいで④少し長め(20秒くらい)でやりましょう。毎日やったとして、伸びてきたと実感するには2,3週はかかるでしょう。筋肉が原因で感じる痛みやしびれはもう少し長くかかるかもしれません。おすすめの回数は週2回くらいから毎日までいろいろですが、わたしは毎日を勧めます。そのほうが習慣になってやり忘れが減ると思います。経験上、1日1回で十分なのですが、2,3回するとより効果が感じられるかもしれません。

 

 一例として、私もやっている真向法(まっこうほう)を紹介します(こちら)。

 

2 ストレッチの種類

 

 大きく二つに分かれています。一つは静的なストレッチで、静かにゆっくりと筋肉を伸ばす方法です。一般的なストレッチ法で、先に挙げた真向法もこれに入ります。

 

 もう一つはダイナミック・ストレッチと言って、動かしながら行うストレッチ法です。細かく分けるとリズミカルに動かす方法(バリスティック・ストレッチ)やPNFなどいろいろあるのですが、動かしながらストレッチをするという点で共通するやり方です。 ストレッチといえば静的なストレッチだと誰もが思っていたのですが、ここ十年で話が変わってきました。

 

3 アンチ・ストレッチ派の逆襲

 

 永いこと、ストレッチは体にいいということに誰も疑問を持つことはありませんでした。ところが少し前から静的なストレッチをスポーツの前(試合の直前)に行うとパフォーマンスが損なわれるという主張が出てきました。調べると確かにその通りで、静的なストレッチを行った直後は瞬発力・筋力が下がることが明らかになったのです。

 

 そこで「ストレッチは体に良くない」という意見が出てきましたが、これはちょっと極端だったようです。スポーツをする直前に静的なストレッチを行うのは良くありません。しかしリズミカルにからだを大きく動かすダイナミック・ストレッチをスポーツの前に行えば、ウォーミングアップになると同時にからだの柔軟性向上に役立つことがわかってきました。

 

 では、ゆっくりとからだを伸ばす静的なストレッチは不要なのでしょうか?いえ、そんなことはありません。はじめに書いたように筋肉痛の改善につながるだけでなく、姿勢のくずれを治し、腰痛や肩こりを軽くします。手足が楽に動かせるようになりますから、スポーツの動きが上手になり、けがや故障も少なくなります。つまり日ごろはゆっくりとしたストレッチを行い、運動の前には大きく体を動かすダイナミック・ストレッチをするのがベストです。

 

4 ストレッチの注意点

 

 ストレッチに慣れてきたころ、足を大きく開いて前屈するストレッチ(真向法第3法)をしているときに腿の付け根にぶちっと衝撃が走り、肉離れを起こしてしまいました。ちょっと痛いくらいのほうが効くと書きましたが、なにごともやり過ぎは禁物です。筋肉の柔軟性は日々変化します。からだの反応を感じながら加減して行いましょう。

 

 ストレッチを続けていたのですが、あるとき太ももうらの痛みがでてきて、座ったり走っているときに自覚するようになりました。ストレッチをさらに懸命にやっても、むしろ痛みが強くなった気がしました。考えた末、ストレッチを3か月ほど止めてみました。なんと!これで痛みが完全に消えてしまったのです。からだの仕組みは複雑です。良かれと思ってすることが必ず体のためになるとは限りません。アタマをやわらかく使うこともだいじです。

 

 若々しさを感じさせる動き、はずむような身のこなしはどこから生まれるかというと、体中の筋肉が文字通りバネのようにはたらいて、力を瞬時にためて即座に放す!動きをしているからです。ゆっくりしたストレッチだけではこの機能を鍛えられません。けがや病気で体力が低下した人がリハビリをするとき、ストレッチや筋トレだけでは回復がいま一つなのはこれが理由です。私もリハビリ中ですが、やわらかく機能的な筋肉にするためにダイナミック・ストレッチをもっと取り入れねばと考えています。