ジェフ・ギャロウェイさんの「100歳まで走ろう」です。
81歳のキティさんは、ある日マラソン大会に参加することを決意しました。彼女は最近進行した肺がんが見つかり、手術不能と説明を受けていますが、すでに参加費を払い済みだったことと、この大会はどうしても走りたいという強い気持ちがあったからです。
最後尾からスタートし、途中ではスイーパー(疲れたランナーを回収する係)から声をかけられます。
「だいじょうぶですか?」
「ええ、まだだいじょうぶです。」
「ではうしろから見守っています。がんばってください!」
この一言に勇気づけられたキティさんは、あたたかい声援に見守られてゴールテープを切ることができました。
この本の冒頭に出ているエピソードです。キティさん、じつは著者ギャロウェイさんのお母さんです。
著者のランニングに対する向き合い方がよく現れています。1972年ミュンヘンオリンピック1万メートルのアメリカ代表だったギャロウェイさんですが、いまは全米各地でランニングクリニックを行い、ラン・アンド・ウォーク・メソッドの普及に努めています。
運動不足だった人、故障や病気を抱えた人、ご高齢になった方でも無理なく体を壊さずにランニングができる。そして健康が促進され、永く元気に過ごすことができる。それを達成するために考えられたのがラン・アンド・ウォークです。
ラン・アンド・ウォークとは、走りと歩きを交互に繰り返す方法で、疲れにくく、故障の少ない走り方を指します。そんなことをすると記録が出ない、制限時間に間に合わないと思うかもしれませんが、一般ランナー、とくに中高年の人にとって合理的な方法だと思います。
ランとウォークのリズムはこんな感じです。
キロ4分30秒 ラン4分 ウォーク20秒
4分45秒 4分 20秒
5分00秒 4分 30秒
5分20秒 3分 30秒
5分40秒 2分 30秒
6分00秒 2分 40秒
6分30秒 1分30秒 30秒
7分00秒 1分 30秒
8分00秒 1分 1分
ギャロウェイさんが1万人のランナーを解析した結果が、こんな感じになります。たとえば平均キロ6分で走る(歩きと走りをすべて足した平均値)とき、だいたい2分走り、40秒歩くリズムを繰り返すとちょうどいいということです。キロ6分というと10キロが1時間、42.195キロのフルマラソンで4時間12分少々ですから、一般ランナーとしてはそんなに悪くないのではないでしょうか。
もちろんペースに個人差がありますから、同じリズムでラン、ウォークを繰り返してもより速い人、遅い人がいるはずです。ですがこのリズムで進むとしたら、けっこう楽な気がしませんか?
わたしは現在骨折からのリハビリ中なので、まず1分ラン、1分ウォークのリズムを試してみました。骨折のあった右足の筋力がまだ弱く、長く走ろうとするとかばった走り方になってしまいます。ラン・アンド・ウォークだと、1分走れば休めるという安心感があり、とても楽に感じました。楽なので、フォームを意識できるし、歩く間にどのようにフォームを修正するかを考えることができます。時計を見ながらリズムを繰り返したのですが、時計によってはビープ音でリズムを教えてくれる機能がついていて、便利かもしれません。
故障からのトレーニングへの復帰のほか、比較的年齢が高くなってからランニングを始める方、とにかくマラソンを完走したい方、長くランニングを続けているがちょっときつくなってきたなと感じている方にはなかなかいいメソッドだと思います。