(アーカイブ;2006年3月号より)
千葉に有名なお医者さんが住んでいました。小倉重成先生という方で、いまはもうお亡くなりになっていますが、全国から難病の患者さんがつめかけるということで有名でした。どこでも治らないといわれた病気が治ったといった話は数知れずあったとのことです。それでは、どんな治療をしていたのだろう?というと、これが意外とシンプルなものでした(ご自身の本に書かれています)。
① 毎日、走る(一日10キロ)
② 玄米食を基本として、その土地でとれたものを食べる
この2点だけです。これに漢方薬の処方をくわえて、慢性の腎疾患や膠原病などのいまでも治療法が確立されていない病気をつぎつぎと良くしていったのですから、おどろきです。
一つ一つの治療例を、現代の目で(科学的に、批判的に)みていけば、ほんとうに治ったとしていいのか議論のあるケースもあったはずですが、だいじなのは、小倉先生自身が、人間のからだには自然治癒力があること、それを引き出すことができればからだは治っていくことを、心から信じていたことです。
また、全国からやってくる患者さんは、「もうここしかない、小倉先生に相談するしかない」と思いつめて来たのですから、小倉先生に諭されたことをすなおに受け止め、いっけん簡単なようで、実際にやるとなるとけっこうむずかしい生活指導をきちんとつづけていった方が多かったのではないかと思われます。小倉先生の強い信念と、それに基づくはげましのことば、何より患者さんたちが信じて努力したことが、大きな成果を生んだのでしょう。
小倉先生は、診療所のとなりに畑を作って自分で野菜を育てていたほど食事を大切にしていたようですが、ここでは、もうひとつの運動のほうを考えてみましょう。
いまの時代でも、食事や運動がだいじだとよく言われます。しかし、どうしてだいじなのかと聞かれると、「そういわれているから」とか「運動不足はからだに良くないから」といったばくぜんとした答え方になるかもしれません。
これを、一度きちっと、おさらいしてみましょう。
肥 満
運動が必要なことはおわかりでしょうが、肥満はそのほかの生活習慣病に連動しています。広告に出ている痩身ダイエット法も、ハデな宣伝文の後ろを読んでみると必ず運動をしてやせています。きつくないゆるやかな運動をつづけていくのがこつです。
血 圧
運動を続けると、高血圧の人は血圧が下がり、低血圧の人は血圧が上がります。やはりきつくない運動(有酸素運動)をつづけることがカギです。これについては、わたし自身も運動をはじめてから血圧が下がりましたので、効果を実感しています。
不 整 脈
多くの不整脈では、運動は禁止になりません。軽い不整脈の場合、運動して心拍数が上がると、不整脈も目立たなくなることがあります。こまかいところはお医者さんに相談してみましょう。心臓じたいの働きを考えれば、運動によって心筋をきたえることにはメリットがあります。
コレステロール・中性脂肪
これは、下がりますよ。運動を続ければクスリはいらなくなる人が大半でしょう。運動を続けることで動脈硬化が改善されたという研究もあります。
糖 尿 病
運動不足からくるインスリン抵抗性が、糖尿病の本質です。というと難しげですが、軽い糖尿病は運動を続けるだけでも治ることは証明された事実です。軽いものも含めると40歳以上の6人にひとりは糖尿病であるといわれる時代ですから、運動をすることがいかにだいじか知ってもらいたいのです。
通風・高尿酸血症
体質も関係しますが、通風の治療でカギとなるのが減量です。すなわち、運動量を増やし、からだの脂肪を落として体重を減らすことが必要です。むかしに比べて通風の人が増えたのは、食生活の変化と同時に、今の人の生活がからだを使わなくなったことが大きな理由と考えられます。
ス ト レ ス
悪いストレスはからだをいろんなかたちでむしばみます。いろいろなストレス対処法がありますが、運動は安全で副作用のないストレス対処法です。また適度な疲労は、睡眠を誘発し、不眠の改善につながります。軽いうつ症状は運動だけで治ることもしばしばです。
そのほか便通、肩こりの改善、はだがつやつやになるなど、運動のいいところをあげたらきりがありません。
なおかつ、タダ!こんなおとくな話はありませんぜ、だんな!
おまけにハラはひっこみ、精力もよみがえります。自分に自信がついてくる!奥さんの(ダンナの)見る目もちがってくることでしょう。
小倉先生の著書の一つ。私も使っています。