(アーカイブ;2006年12月号より)
同窓会。なつかしいような、ほろにがいようなことばです。久しぶりに会う友だちは、むかしの面影が残っている人もいれば、「え、だれだっけ?」と思うくらい感じが変わってしまった人もいます。
わたしも、このあいだ中学の同窓会に出たのですが、ぜんぜん感じの変わらない人もいましたが、なんでそんなになっちゃったの?ってびっくりの人もいました。
すごい太ってるんだもん。まあ、中学のときと比べると、おしなべて肉のついた人が多かったですが、とんでもないくらいに太ってしまって、はじめは誰だったのか思い出せないくらいでした。
中学生のころにはおんなじくらいの肉付きだった人たちが、ある人はほとんど変わらないのに、ある人はどんどん太ってしまう、これはなぜなのでしょうか?
中年ぶとりということばがあるけれど、年をとったら太るのはあたりまえなのでしょうか?
そもそも、太るのは良くないっていわれているけれど、太っていたって健康なら、別にかまわないのではないでしょうか?
今回は、太ることの意味を考えてみましょう。
太っていても、健康でいられるのか
太る=不健康、やせている=健康。これっておかしいと思いませんか。太っていても健康な人がいますし、やせていて不健康な人もいます。健康とは、病気にかかりにくいじょうぶな体であると同時に、毎日をはつらつと生きていく力があるということです。
やせていても、太っていても、元気で、充実した毎日を送っている人は健康です。生まれつきの体質がありますから、多少太めでも健康な人がいますし、やせていても健康な人がいます。
今までの人生の中で、いちばんはつらつと毎日をおくっていたころを思い出しましょう。それは中学生のころ?二十歳ぐらいのころ?そのときの自分の体型を思い出しましょう。いまの体型に比べてどうでしたか?当時と比べて太っている人は、やはり今は余計に太っているということになります。多少太めでも、当時と今であまり変化がないという人は、それがあなたの健康体型ということになります。
太ったっていいのではないか
そうです。言ってしまえば、本人の自由です。太ってなにも悪いわけではありません。
歴史をさかのぼると、太めのほうがカッコいい、という時代のほうが多かったんじゃないかとさえ思います。世の中が安定しなくて、食糧事情もきびしい時代には、太っているということは、健康のあかしであり、富の象徴で、そのひとの有能さを示すものだったのです。これは聞いた話ですが、砂漠の国では、いまでも、太っていることがあこがれであり、男性なら女性にモテル条件になるそうです。つまり、見た目の問題は、その土地、時代で変わることであり、自分さえ納得できるなら太っていてもいっこうに構わないということになります。
「しかし、健康に悪いんじゃないの?」という疑問が浮かんできたようですね。ところが、これもいろんな報告を見るかぎり、一筋縄ではいかないようです。というのは、長生きしている人を調べると、やせている人よりも、むしろ少し太めの人のほうが多いという研究もあるからです。太っているから長生きできるのか、太れるくらいのひとのほうが安楽で豊かな生活を送っているので、結果的に長生きできるのか、解釈はいくとおりにもできるのです。
太る理由のおおもとは、からだの脂肪が増えることです。脂肪はエネルギー源としてカロリー量が高く、脂肪をたくわえるということは、ほんとうはからだにとって悪いことではないのです。おおむかし、人間が狩をしたり、木の実や根っこを集めて暮らしていたころ、ときには食べ物がなかなか見つからないときもあったはずです。こんなとき、からだにたくわえた脂肪が役に立ったのです。農耕生活に入って、安定した食料供給ができるようになったのは、たかだか数千年のことで、人間の進化の過程でみればほんの一瞬に過ぎません。わたしたちのからだのしくみは、数千年前の人とまったく同じであり、いまでもすきあらば、体に脂肪をたくわえようとしているのです。
じゃあ、ほんとうに太っちゃっていいのか
結論から言うと、太ることが問題なのではなくて、運動しないことが問題なのです。運動不足の弊害はそれこそ全身に及びます。テレビやマスコミでさんざんいわれていますから、ここでいちいち蒸し返すつもりはありませんが、生活習慣病(むかしは成人病といった)がおきるのは、運動不足こそが真の原因です。結果的に太ってしまいますから、やせろーやせろーと言われることになるのです。
むかし大学のリハビリ外来でみていた脳卒中の患者さんたちも、多くは運動不足で、ストレスの多い生活をしていました。からだを動かすことはストレス解消にも役立ちます。
そして、こういいたい。ネリマの人(あなたの地元の人)は90パーセント運動不足です。ふつうにくらしている、ふつうの人は、ほぼ全員運動不足です。体重計より、まず運動することを考えましょう。体重の問題は、後から結果が追いついてきます。