(アーカイブ;2005年7月号より)
さあ、もうすぐ夏休み!とはいっても、これを読んでいる方は、お盆のときだけ休みをとるか、ぜんぜん休まないではたらいている方が多いかもしれません。でも、家族サービス、お孫さんへのサービスで旅行の計画を立てている方もいるでしょう。出かけることそのものは楽しみなのに、帰ってきたときにはくたびれて、「やっぱり家がいいや」と思ったりもします。それでも毎年出かけるころになると、うきうきしてくるからふしぎですね。
ところで、からだをたくさん使えば、どんな人でもつかれがたまります。つかれは、脳のつかれ、内臓のつかれ、筋肉のつかれのように、からだの使い方によってつかれる部分が変わってきますが、このうち筋肉の疲れは、筋肉そのものがはってきたり、熱を持ったり、押すと痛みを感じたりするので、わりあいとわかりやすい、だれでも経験する症状といえるでしょう。
それでは、むくみはどうでしょうか?むくみと疲労のあいだにはつながりがある気がしますが、むくみそのものは、内臓やホルモンの病気、くすりの副作用で出ることも多いので、かならず疲れと関係があるわけではありません。
わたしのところで相談を受けるむくみは、どちらかというとからだ全体のむくみではなくて、片手なら片手、片足なら片足の相談がほとんどです。相談にこられる方は、「なにか病気があるのではないか?」と心配されますが、たいていのケースでは全身的な病気を考えるより、局所的な理由を考えたほうが良いように思います。
そして、筋肉のつかれと、むくみの症状には一定の関係があるようです。
たとえば、片足がむくんできた場合を考えましょう。まず、どこらへんがむくんでいるかを調べます。ひざから下でしょうか?それとも、ふとももから下でしょうか?
ひざから下がむくんでいる場合、ふくらはぎの筋肉がはっているかもしれません。
ふとももからむくんでいる場合、ふとももの筋肉がはっているかもしれません。
心臓にもどる血液は、静脈を流れます。静脈というと手足の表面にある青い血管を思い浮かべる人が多いはずですが、静脈の大部分はもっと深いところ、骨や筋肉のすきまを通って心臓のほうに向かっていきます。静脈じたいはとてもやわらかいので、何かに押されればかんたんにひらべったくつぶれます。そばの筋肉が動いて静脈を押していると静脈はつぶれたままですが、筋肉の力が抜けるとふたたび流れ出します。正常の場合、まわりの筋肉がこのように力が入ったり抜けたりすることでうまく静脈の流れを調整しています。いってみれば、筋肉は小さなポンプみたいなものですね。
疲労のために筋肉がはってくるとどうでしょうか?
はった筋肉は、力を抜いていてもやはりはれているので、そばの静脈は押されっぱなしになります。その場所を流れて心臓に向かうはずの血液は流れにくくなりますから、ほかの血管に流れようとします。ほかの部分でうまく流れてくれれば何も問題はおきないはずですが、通れる場所が少なくなった分だけ静脈の圧力が高まりますから、通しきれないぶんの血液やリンパ液が鬱滞します。これがむくみになるのです。
川の途中が土砂で流れが悪くなっていると、川の手前ではちょっとしたことではんらんがおきてしまう。同じようなイメージですね。
だから、ふくらはぎのはれではひざから下がむくみ、ふともものはれでは太ももから下がむくむのです。
うでの場合でも、同じことがおこります。ただし、うでの場合は、どこで静脈の流れが悪くなっても症状は手のむくみが目立ちます。二のうでの筋肉や肩のつけねの筋肉が原因になることが多いようです。
こういうむくみはどのようにすれば治るのでしょうか?
筋肉のつかれがとれて、筋肉のはりがなくなったら、自然に治ってしまう。これが一番いいかたちですし、ほとんどはこうやって治ってしまうのでしょう(みんなが経験していることですね)。
単純な疲れからくるはりだけでなく、筋肉の一部に炎症がおきてひきつれが残ってしまうことがあります。このひきつれで静脈が圧迫されると、むくみが長引くことがあります。こんなときは筋肉のひきつれをなおす治療、すなわちストレッチやマッサージが必要になります。
よく似た相談に、うちみや捻挫の後で腫れがなかなかひかないというのがあります。この場合は、炎症がおきたところの皮下組織にこわばりが残っていて、リンパ液の流れをさまたげているので、皮膚・皮下組織のマッサージが有効です。
ご年配の人で、両足がむくむという相談があります。様子を見ていると、一日中じっとしていてあまり動かないという人に多いようです。これは、むしろ足の筋肉を使わなくなったために静脈の流れが悪くなっている(筋肉によるポンプ作用がはたらかない)ためにむくんでいるのですから、できるだけ、下半身の筋肉を動かす習慣をつけることがだいじです。