スポーツの特性を理解しよう
スポーツの多くでは、必要なのは敏捷性とパワーである。
1980年代、スポーツに科学の力を取り入れ始めたとき、大きな失敗があった。というのは、実際にスポーツに取り組んだことのない運動生理学の専門家に頼ってしまったのだ。
まずアスリートにテストを行い、その結果を分析し、結論を引き出す。これが彼らのやり方だ。
とくに最大酸素摂取量(VO2max)が問題だった。これは比較的長い時間動き回った時の有酸素運動の能力を計るものだが、瞬発的に動き、ストップ・アンド・ゴーをくりかえす競技(サッカーなど)、競技時間が短く区切られている競技(テニスなど)の能力を正確に測るものではない。
長距離ランニングのように持続的な有酸素能力の高さが競技をするうえで指標となるのがVO2maxなのだ。
その結果、次のようなことが起こる。
- 瞬発系のアスリートはおしなべて有酸素能力は低めである
- 試合時間が短めでブレークのある競技(多くの団体競技)ではそれほどの有酸素能力は必要でないかもしれない
- 瞬発系のアスリートが持久力中心のトレーニングを行うとパフォーマンスが落ちる
- 地面との接触がなく股関節の伸展が行われないエクササイズ(バイクなど)中心では、グラウンドコンタクトのある多くのスポーツでけがが増える
たとえば、一回の競技中に連続して何マイルも走る団体競技は存在しない。サッカーでもダッシュの合間にジョグやウォークが入る。だから、トレーニングでもダッシュ、ジョグ、ウォークをくりかえすのが正しい。
もうひとつ大事なのが、ゆっくりしたトレーニングをすればゆっくりと動くことになることだ。ゆっくりしたトレーニングで速く動けることはない。
またクロスカントリー(不整地を走る競技)ではけがをしやすいのも問題だ。
以上をまとめてみると、アスリートのパフォーマンスを分析する上で大切なのは、その選手の優れた点をみつけそれを伸ばすことだ。欠点をみつけその底上げを図るアプローチではない。目的は何でもできる平凡な選手ではなく、傑出した選手を作ることなのだから。